機関紙

<4>さまざまな壁を越えて調整する、新たな役割

2017年07月 公開

災害時の家族と健康<4>

壁を越えて調整する、新たな役割



神奈川県立保健福祉大学 准教授

 吉田 穂波


ボランティア・マネジメント

 阪神淡路大震災をきっかけに日本に広まった「ボランティア」という概念。それが東日本大震災では、多数のボランティアが集まり活躍したことから、支援者のための支援や、その在り方についても議論を呼びました。
 現地でお会いした多くのボランティアは、キャリア中断中であったり、学生さんだったりしましたが、特徴的だったのは、周りの理解のある人が多かったということです。そうでなければ現地に長期滞在し、雇用契約がない仕事に従事したり、臨機応変に移動をしたりということはなかなかできなかったでしょう。
 ボランティアは個人としてやりがいのある半面、保険や費用負担、受け入れ先とのマッチングなど、長期的な視点に立って、自治体ごとにボランティアを受け入れる準備をしておく必要があります。
 少しでも多くのボランティアに効率よく仕事をしてもらうため、平時からボランティア専用カード(経験したことのある職業、事務作業や物資の仕分け、保育や介護など得意な手技、滞在可能期間など)を準備し、マッチングのルールとマニュアルを明文化しておくのも、災害に備える具体的な方法です。


コーディネーターとファシリテーター
 東日本大震災における復興支援の中で新たに評価された仕事は、コーディネートをするという仕事でした。例えば、支援がほしい人と支援したい人とをマッチングする、どこの物資が足りなくてどこは足りているかを把握し管理する、このような連絡調整係がとても重要な役割を果たしたのです。この役割は感情労働の部分が多く、専門性が確立していないため評価されず、ステータスが低い、バーンアウトしやすい、という課題も明らかになりました。
 自らが専門家ではなく、さまざまな専門家の協力を仰ぎ、連携させる事務的リーダーシップというのも、今後さらに評価されていくべきだと考えます。
 刻一刻と変化する状況に合わせて意思決定をするためのミーティングにおける、ファシリテーターという役割も定着しました。
 例えば、貴重な時間を割いて開く会議で、従来の縦割り行政のように現状承認、総論賛成、実務反対、各論躊躇(例えば、復旧は今のように支援チームでやってくださいとか、その問題はうちの課の担当ではありませんので他の課にお問い合わせください、など)では物事が前に進みません。
 ファシリテーターには、このミーティングの目的が意思決定なのか、問題解決や計画なのか、ブレーンストーミングなのか、評価のためなのか、情報共有のためなのか、目的をはっきりさせて参加者が共有できるようにし、メンバー全体を共通のテーマに集中させたり、全員に発言の機会を与えたり、時間内に目標を達成させるという役割があります。


災害時の連携に向けて
 東日本大震災以来、どのような災害であっても新聞紙面に取り上げられるのが、政府や中央省庁と被災地との距離感です。東日本大震災では、われわれ支援団体が被災地である地方行政に、復旧へのさまざまなステップ、例えば、死亡者数・在宅被災者数・食料自給率・要介護者数・妊産婦数など基礎的データを把握するための災害規模のアセスメントを要求しても、お手上げ状態でついていけない、具体的な資料も経験者も調査用紙もない、という状況でした。
 被災地は国直轄の行政特区にし、国の行政官や公衆衛生の専門家、難民支援の経験者が直接指揮を執れる仕組みにした方が、地域ごとの格差もなく、より早い復旧が可能になるのではないかという意見が、災害コーディネーターとして被災地に入った専門家から数多く出されました。
 自治体の災害対策マニュアルにおいても、現状の役割に加え、被災地調整(コーディネーター)や情報管理という職務を入れておくと、旧来設置されている総務、広報、救護、物資などの職務で忙殺される職員を助け、情報を整理したり振り分けたりできるかもしれません。
 私が留学していたハーバード公衆衛生大学院のリーダーシップの授業では、組織におけるリーダーシップではなく、さまざまな部署、職種間の壁を調整するメタ・リーダーシップという概念を学びました。
 庁内のマンパワーだけで乗り切るのではなく、災害時には外部から、壁を越えて調整機能を果たす人材が現地に入り、ある程度長期にわたって駐在し、全体を把握しながら情報共有を進めると、より効果的な支援が可能になります。その気付きが、現在都道府県で設置されている災害医療コーディネーター制度になり、災害時小児周産期リエゾン(災害時の医療救護チームや災害医療専門家と小児・周産期専門家との橋渡し役)の養成につながっています。
 皆さんの自治体でも、今のうちに所轄の都道府県の災害コーディネーター、災害医療コーディネーター、その他の支援団体との連絡方法を調べ、いざとなったら支援に来てもらうための文書まで用意しておくと、一番苦しいときの心強いサポーターが増えるかもしれません。

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