|
|
わが国においては、卵巣機能が未成熟な思春期女子に、ピルを長期間投与すると卵巣機能不全をきたし将来不妊になるとか、骨端線の早期閉鎖により成長が妨げられるといわれ、初経後間もないピルの処方にためらいを感じている専門家が少なくありません。低用量ピルが出現する前は、ピル先進国でも、初経後二年間、ピルを使用すべきではないといわれていましたが、その後三カ月に変更されました。しかしピル服用後に不妊が増加する事実はありませんし、初経発来前でも必要ならば使用してよいとの考え方が一般的になっています。
ところでわが国の専門家が危惧するように、思春期女子にピルを服用させたら本当に卵巣機能や身体発育に悪影響がおよぶのでしょうか。
妊娠する可能性のある場合に避妊が必要なのであって、たとえ十代の女子であっても、セックスが行われることを前提に交際が続くならば、避妊は必要不可欠な手段であることは言うまでもありません。私たちのクリニックでは、ピルの服用を希望する女子には、服用開始前に基礎体温の測定を指示し、排卵を伴う月経周期であり、妊娠する可能性があることを確認するようにしています。その後であれば、ピルの処方を成人女性と同様に行うことをためらう理由はないと考えています。
時には、排卵周期がまだ確立していない女子がいます。その場合には、排卵周期確立のための治療を勧めることもありますが、セックスを最優先するような女子では、ピルの処方に踏み切ることになります。ピルは、骨盤内感染症を予防する、子宮外妊娠や望まない妊娠に伴う人工妊娠中絶を回避できるという利点があり、不確実な方法で避妊し、失敗妊娠に至る例に比べて、結果として将来の妊孕性(にんようせい)を維持する可能性が高いと言えるからです。
一方、成長障害の危険性については、エチニール・エストラジオール三十〜五十マイクログラムを毎日投与しても、時にはプロゲストーゲンとの配合剤ピルであっても、思春期女子の骨端線の早期閉鎖を促進するという証拠があるわけではありません。
そのような観点から、ピルは避妊効果が高く、副作用が少ないために、思春期にとって、適切な避妊法の一つになるだろうと思われます。低用量ピルが使用される場合、この年齢層に対する禁忌と副効用は、成人女性の場合と同様です。セックスが日常化していない思春期では、高年齢の女性に比べてピルをきちんと服用することが困難であり、服用開始時のカンセリングに際し、忘れずにきちんと飲み続けるよう強調する必要があります。更に、妊娠だけでなくエイズを含めた性感染症についても十分な理解が得られるように、適切な指導が要求されます。
思春期女子および成人にとって、一相性ピルが二相性あるいは三相性ピルよりもふさわしいという確たる証拠はありません。 |
|
|