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第4回 「男女の生活と意識に関する調査」結果の概要 「第 4回男女の生活と意識に関する調査」は、2008年度厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)「全国的実態調査に基づいた人工妊娠中絶の減少に向けた包括的研究」(主任研究者=武谷雄二東京大学医学部産科婦人科学教室教授)の一環として、分担研究者である本会家族計画研究センターの北村が中心となって実施した。これで2002年、04年、06年、08年の 4回にわたって行われたことになる。
(本会常務理事・家族計画研究センター所長 北村 邦夫)調査は、@日常生活や考え方について、A男女の関係性について、B性の意識や知識について、C自身の性行動について、D初めてのセックス(性交渉)について、E現在の避妊の状況について、F予期しない妊娠の防止についてなど、わが国における性や避妊・妊娠・中絶などに関する男女の意識や行動などを中心に40項目にわたる質問からなっている。研究は人工妊娠中絶を減少させる要因についてさまざまな側面から探ることを目的としているが、この調査結果からはわが国における中絶減少に向けた新たな取り組みの方向性が示唆されることとなった。本号では、性意識、性行動、避妊、人工妊娠中絶などに話題をしぼってまとめた。
調査方法は「層化二段無作為抽出法」
「第 4回男女の生活と意識に関する調査」を行うにあたっては、@調査の目的と必要性及び期待される成果、A調査及び学術調査の概要、B調査内容(調査目的と質問項目)の妥当性、C調査対象者の標本数及び属性について、D調査対象者の選定・依頼と協力について(選定基準、依頼方法、協力の詳細)、E調査対象者の権利の保護について(調査対象者が未成年者の場合も含む)、F個人情報を保護する方法、G調査結果の公表などについて詳細に明記したうえで、(社)新情報センター倫理委員会(東京都渋谷区)に宛てて「倫理審査申請書」を提出し慎重な審議を経た後、行われたものである。
調査は層化二段無作為抽出法という調査手法を用い、平成20年9月1日現在満 16歳から 49歳の国民男女3千人を対象として、平成20年9月11日(木)〜9月28日(日)に実施した。その結果、長期不在、転居、住居不明によって調査票を手渡すことができなかったものを除く 2,712人のうち有効回答数は 1,468人(男性 647人、女性 821人)、54.1%であった。有効回答率は第 1回 52.4%、第 2回 52.7%、第 3回 51.9%であり過去最高であった。回答者の平均年齢は男性 34.5歳、女性 34.8歳。
表2 わが国既婚女性の避妊法の選択(1952年〜2008年)
(※は再掲、1−25回:毎日新聞社人口問題調査会:全国家族計画世論調査、2002・2004・2006・2008:222
北村邦夫:「男女の生活と意識に関する調査」)本調査が行われる今日的意義とは
図1 あなた(あるいは、あなたの相手)は
人口避妊中絶手術を受けたことがあるか
(北村邦夫「第4回男女の生活と意識に関する調査」2008)
表1 既婚女性の人口避妊中絶経験率(%)
(1952-2002年:毎日新聞社調査、2002−2008年:北村邦夫「男女の生活と意識に関する調査」)母体保護法に基づく人工妊娠中絶の届け出件数は、1955年の 117万件をピークに漸減し 2006年度には 276,352件と史上最低を記録している。ここ数年間を概観すると、20歳未満については 95年の 26,117件以降直線的に増加し、01年には 46,511件と過去最高となった。02年度以降 5年間にわたって減少傾向にあるとはいえ、依然として高率であることに変わりはない。
しかも、15歳未満の人工妊娠中絶実施件数が前年比 32件増と年齢階級別にみて唯一増加し 340件となるなど、性行動の低年齢化、加速化と合わせて憂慮すべき状況にある。
本研究班では、わが国における人工妊娠中絶実施件数や実施率が事実を反映したものとなっているのか、仮に人工妊娠中絶実施率が減少しているとしたら、どのような要因が関与しているのかなどについて、科学的に検証することを目的として取り組んでいる。
本調査はこのような研究班の目的を達成するための実証分析を行うために実施する。また、本調査は 2002年から隔年で実施しており今回が第 4回目。時系列での調査を行うことで、国民の性や妊娠についての意識や実態を継続的に把握することができる。これらの調査結果は、さまざまな側面からの分析、及び人工妊娠中絶の減少等に向けた提言や施策の基礎研究資料として広く活用されており、社会的な意義が大きい。
また本調査は、毎日新聞社人口問題調査会が 1952年から 2000年まで 2年ごとに行ってきた「全国家族計画世論調査」を踏襲するものであり、調査方法はこれに準じて実施している。したがって家族計画関係の調査としては今回で 29回目に相当する。人工妊娠中絶、経験率は減少傾向
これまでに人工妊娠中絶の手術を受けたことが「ある」という女性は 14.9%。女性だけに特定すると、本調査からは 16−19歳では人工妊娠中絶の手術の経験者はなく、20歳代の年齢層でも「人工妊娠中絶の手術を受けたことがある」と答えた者は 5%前後であったが、30−34歳(13.6%)、35−39歳(18.4%)、45歳以上(28.1%)と回答している。さらに、複数回中絶の経験者は女性で 25.4%にも及ぶ(図1)。
自分または自分の相手が人工妊娠中絶を受けたことが一回だけあると答えた者(122人)に、中絶手術を受けた年齢を聞いたところ、相手の女性が受けた男性 24.4歳、女性 24.1歳となっている。また、これまでに人工妊娠中絶手術を受けたことがある女性(122人)に、過去 1年間の人工妊娠中絶手術の経験を聞いたところ、「1回」(10.7%)で、2回以上受けたものを合わせた「過去一年間に人工妊娠中絶手術を受けた」者は 11.5%であった。反復中絶率は女性 25.4%
毎日新聞社調査では既婚女性を対象に実施していることから、それに準じたデータで比較すると中絶実施率の減少を反映するように中絶経験率も低下していることが明らかである(表1)。
中絶手術の理由「相手と結婚していないので」
これまでに人工妊娠中絶手術を受けたことがある女性( 122人)に、最初の人工妊娠中絶手術を受けることを決めた理由を尋ねたところ、「相手と結婚していないので、産めない」(27.9%)という者が最も多く、次いで「経済的な余裕がない」(15.6%)、「相手との将来を描けないから」(12.3%)、「自分の仕事・学業を中断したくない」(6.6%)と続いている。相手の女性が中絶手術を受けたという男性(46人)では、「経済的余裕がない」(32.6%)、「相手と結婚していないので、産めない」(19.6%)、「相手との将来を描けないから」(8.7%)であった。
これまでに人工妊娠中絶手術を受けたことがある女性(122人)に、最初の人工妊娠中絶手術を受けることを決めたときの気持ちを聞いたところ、「胎児に対して申し訳ない気持ち」だったという者が 45.1%(男性 28.3%)で最も多く、次いで「自分を責める気持ち」 16.4%(男性 13.0%)、「自分の人生において必要な選択である」 13.1%(男性 10.9%)、「手術への不安」 7.4%(男性 2.2%)などの順であった。男性では「相手に対して申し訳ない気持ち」が 21.7%(女性 0.8%)と高く、中絶手術を受ける側と受けさせる側の気持ちの違いが明確に示される結果となった。人工妊娠中絶「条件付きで認める」6割
図2 低容量ピルについて
(北村邦夫「第4回男女の生活と意識に関する調査」2008)
表3 モーニングアフターピル、性交後避妊、
緊急避妊法の言葉を聞いたことがあるか
(北村邦夫「男女の生活と意識に関する調査」2004・2006・2008)人工妊娠中絶について「認める」は 7.4%、「認めない」 7.4%、「条件付きで認める」 59.9%であった。本調査では「どちらともいえない」の選択肢を入れたこともあり、これが二割近くであるが、1952年以降「条件付きで認める」が6割程度を占める。
避妊実行者のうち約 8割はコンドーム
これまでにセックス(性交渉)をしたことのある者( 1.267人)に、この一年間の避妊の状況を聞くと、「いつも避妊している」と答えたのは 39.2%、「避妊をしたり、しなかったりしている」者は 19.2%、「避妊はしない」という者は 17.6%。避妊実行率を算出する場合には、「いつも避妊している」と「避妊をしたり、しなかったりしている」を加えた数値を用いることが一般的だが、その数は 58.4%。
避妊を実行していると回答した 740人に主な避妊方法を聞くと、男性用コンドーム 84.7%、腟外射精(性交中絶) 13.9%、飲む避妊法(ピル) 4.6%、オギノ式 2.6%、不妊手術(女性) 1.8%、基礎体温法 1.1%、子宮内避妊具(IUD/IUS) 0.4%などの順。ピルは前回調査に比べて 3.8ポイント増加した。
毎日新聞社人口問題調査会の「全国家族計画世論調査」では既婚女性を対象としているので、ここでは既婚(初婚・既婚)女性に限ってまとめた
。ピルの普及率と緊急避妊法の認知度は高まる
女性回答者のうち、低用量ピル(経口避妊薬)のことを「よく知っている」( 13.0%)、「ある程度知っている」(58.8%)という者を合わせると三人に二人は「知っている」と答えている。回答者の女性に低用量ピルの利用意向を聞いたところ、「既に使っている」(3.0%)、「現在は使っていないが、ぜひ使いたい」(9.6%)、「将来は使いたいが、今は使えない」(6.6%)であり、19.2%の女性が利用意向を明らかにしている。これに対して、「使いたくない」は 71.7%を占めている。15−49歳の生殖可能年齢の女性人口 2,742万人(2008年10月1日)で推計すると、「将来は使いたいが、今は使えない」までを加えると 5275,000人に相当する(図2)。
緊急避妊法∞モーニングアフターピル∞性交後避妊≠フいずれかの言葉を「聞いたことがある」(28.5%)者はほぼ三人に一人、「聞いたことがない」(67.4%)者は 7割を割る。性別には緊急避妊法∞モーニングアフターピル∞性交後避妊≠フいずれかの言葉を「聞いたことがある」という者は男性(26.4%)、女性(30.2%)で、女性の三割近くが「聞いたことがある」と答えている。
過去二回の結果を追ってみると、全体では04年(20.8%)、06年(24.3%)、08年(28.5%)と明らかな増加傾向が認められる(表3)。緊急避妊法∞モーニングアフターピル∞性交後避妊≠フいずれかの言葉を聞いたことがあるという者に、いずれかの方法を利用したことがあるかを尋ねると、「利用したことがある」は全体では 6.2%(男性 7.0%、女性 5.6%)。これは国民全体の 4.1%に相当し、15−49歳の人口から推計すると約百万人が使用した計算になる。人工妊娠中絶の減少は、性交頻度と関係?
図3 婚姻関係にあるカップルで進むセックスレス
(北村邦夫「第4回男女の生活と意識に関する調査」2008)
表4 既婚関係にある人がセックスに対して
積極的になれない理由(%)
(北村邦夫「男女の生活と意識に関する調査」2008)人工妊娠中絶の減少要因としては、@出生数が増加し、結果として中絶が減少した、A避妊教育が充実した、B近代的避妊法が普及した、C性交頻度が少なく妊娠の機会が減った、などが考えられている。筆者は@Aを否定するものの、BとCにはそれなりの根拠を挙げることができる。
特にBについては、低用量ピルの売上レベルが前年比 15−17%程度増え続けていること、本調査からも普及率が前回に比べて 1.2ポイント増加したこと、緊急避妊法の認知度が年々高まっていることなどから明らかである。興味深いのはC性交頻度の減少が目立つことである。
日本性科学会は 1994年にセックスレスを「特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交あるいはセクシュアル・コンタクトが一か月以上ないこと」と定義。セクシュアル・コンタクトにはキス・ペッティング・裸での同衾(どうきん)などが含まれることから、「この一か月間セックス(性交渉)が行われているか」と尋ねる本調査での質問は狭義にセックスレスをとらえていることになる。
婚姻関係がある男女でのセックスレス率は 36.5%。01年に朝日新聞社がインターネットで行った「夫婦の性、1000人に聞く」では 28.0%、研究班として実施した 04年調査では 31.9%、06年が 34.6%であったので、わが国のセックスレス化が一段と進んでいることは明らかである(図3)。
婚姻関係にありながらセックスに対して積極的になれない理由を尋ねると、男性では「仕事で疲れている」がトップで 24.6%(女性 15.1%)、女性では「出産後何となく」が一番で 21.0%(男性 13.6%)、「面倒くさい」(男性 9.3%、女性 18.8%)、「セックスより楽しいことがある」(男性 2.5%、女性 8.6%)、「家族(肉親)のように思えるから」(男性 6.8%、女性 4.3%)などが続く(表4)。
このようにセックスレス化が進行することは、妊娠の機会が失われ、結果として人工妊娠中絶を減少させる可能性があるものの、同時にわが国の少子化と決して無縁ではないように思われる。謝 辞
厚生労働科学研究費補助金(子ども家庭総合研究事業)の主任研究者である武谷雄二東京大学医学部教授からは調査研究費にご配慮を賜った。調査票作成に際しては、武谷研究班の班員だけでなく、佐藤龍三郎さん(国立社会保障・人口問題研究所)、西内正彦さん(元共同通信社)、菅睦雄さん(リプロヘルス情報センター)、家坂清子さん(いえさか産婦人科医院)などから貴重な意見を頂戴することができた。層化二段無作為抽出法については既にご紹介した通りであるが、対象者の抽出にあたっては 150市区町村において住民基本台帳の写しの閲覧が必要であった。厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課千村浩課長(当時)には該当市区町村長に対して「住民基本台帳の写しの閲覧願い」をご提出いただいた。そのための煩雑な事務作業を母子保健課関係各位にご依頼せざるを得なかった。突然の調査依頼が向けられた関係市区町村の担当者の協力も不可欠であった。疫学研究について専門的な立場から終始ご助言を賜った中村好一自治医科大学医学部教授(筆者の大学時代の後輩でもあるが)、(社)新情報センターの安藤昌代さん、煩雑な作業に協力いただいた当クリニック杉村由香理事務長、なによりも調査にご回答いただいた方々に深甚なる感謝の意を表したい。
これを手にされる皆様の研究、施策の立案に有効に活用されることを切に願っている。
編集帖 ▼本会が推進するリプロダクティブ・ヘルス(RH)は女性の健康にかかわる重要なキーワードであるが、これには母子の生命や健康にとって安全な妊娠や出産ができることが含まれている。本会の国際協力のパートナーである家族計画国際協力財団(ジョイセフ)はこのRHを実現するために開発途上国へ国際援助を行っている。
▼ジョイセフは使用済みのテレフォンカードや自転車、ランドセルや鉛筆を収集し、開発途上国の支援に役立てている国際NGOとしても広く知られているが、「ホワイトリボン運動」という開発途上国の母親と子どもの命を守る活動も行っている。この運動は「ホワイトリボン・アライアンス(WRA)」という国際組織が展開しており、200以上の国際援助機関が参加している。日本では、ジョイセフが正式な加盟団体として登録されている。
▼WHOなど国連機関の発表した数値によると、世界中で妊娠や出産が原因で死亡する女性は 1分間に一人、その数は年間約 54万人。五歳までに亡くなる子どもは年間約 1千万人である。この実態は信じがたいが、このほとんどが開発途上国に集中している。
▼開発途上国に共通する問題は、保健・医療施設の不足、高い技術や知識をもつ医師・看護職の不足であり、住民は劣悪な衛生環境と食料不足の現状にさらされている。出産・育児は衛生的な環境が不可欠であるが、この環境を改善するためには長期的な粘り強い継続支援が必要である。
▼苦しむ開発途上国の母親と子どもたち。この現実に我々は何が出来るか。一人ひとりの小さな国際援助が開発途上国への大きな国際援助に発展していく「ホワイトリボン運動」。この運動が日本に定着し、開発途上国のRHに寄与することを願ってやまない。(TS)
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